本来身を守るはずの免疫が暴走し自分自身の体を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といい、関節リウマチはその代表的疾患です。
関節リウマチでは関節滑膜や腱鞘滑膜が自己免疫の標的となるため、関節に痛みや腫れが起こります。
手足だけでなく全身のどの関節にも起こる可能性があり、適切な治療を受けなければ、侵された関節は破壊され関節としての機能が低下します。
病気が進行すると関節の変形や脱臼のため日常生活が不自由になります。
また、関節以外の内蔵などにも障害を起こす場合があります。
関節リウマチの患者さんは日本に60~70万人いるといわれており、決して珍しい病気ではありません。発病するのは子供から高齢者まで幅広いのですが、40歳代の働き盛りにピークがあり、そのため社会生活に支障をきたしてしまう場合がしばしばあります。
また、女性は男性よりも3~4倍多く、家事や育児に支障をきたしてしまう場合があります。
関節リウマチの診断には、世界共通の基準があり、米国リウマチ学会(ACR)が作成したものでACR基準と呼ばれています。臨床症状や臨床検査、画像診断などを組み合わせて診断を行います。長くリウマチを患っている患者さんのほとんどはこの基準にあてはまりますが、発病後間もない患者さんでは必ずしもあてはまらない場合が多いのが問題でした。
※上記7項目のうち4項目以上あてはまる場合、「関節リウマチ」と診断
※1〜4の4項目は、6週間以上持続していること
世界的に早期治療の重要性が認められてきたため、どれだけ早く関節リウマチと診断するかが重要となってきました。
そのため、2010年に、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)の両学会から関節リウマチをより早く見つけ出すことを目的とした分類基準が発表されました。各項目のスコアを合計して6点以上になると、関節リウマチと診断されます。
血液検査や尿検査は、関節リウマチの診断や病気の強さ、治療薬の副作用の有無をみるために行います。他の病気でも検査値が大きくなったり、陽性になることがあり、検査項目1つが条件を満たしても必ずしも関節リウマチとは限らないため、他の検査と組み合わせて診断されます。
画像診断は、関節リウマチの診断や評価に不可欠なものです。
関節の変形や破壊の程度、治療効果の判定などに用いられています。
X線写真は、最も基本的で重要な検査で、関節破壊の程度を読み取ることができます。
超音波検査では、グレースケールで滑膜が厚くなっていないか、滑液がたまっていないか、骨びらんがないかなどを確かめます。滑膜が厚くなっている部分ではパワードップラー法を用いて血流の状態を評価します。また関節だけでなく腱鞘の滑膜炎の存在も同時に観察することができます。
MRIは、X線写真では分かりづらい関節液や滑膜もはっきり写るため、早期診断で用いられます。
関節リウマチの治療は、現在ある関節の痛みや腫れ・こわばりを軽減するだけでなく、長期的に病気の進行を抑え関節破壊を防止することが重要です。
現在のところ根治療法はありませんが、2011年から標準治療薬であるメソトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレートなど)の使用量が欧米並みに増やせるようになり、レミケード、エンブレル、アクテムラ、ヒュミラ、オレンシア、シンポニー、シムジア、インフリキシマブBSの8剤に増えた生物学的製剤、さらにはJAK阻害薬と呼ばれる新機序の経口分子標的薬:ゼルヤンツなどを使い分ける時代となり、病気の進行を食い止めることが可能となってきました。
症状の程度や進行の早さにはかなりの個人差があるため、治療方針は患者さんにより異なりますが、発症早期に治療を開始することで、リウマチの進行を防げる可能性が高くなることも分かってきました。
リウマチと診断されれば、早期にリウマチ専門医による治療を受けるべきです。
当院では、薬による治療から、リハビリ、手術的治療(関節鏡による滑膜切除、関節温存足趾形成術、腱断裂の手術、膝・股・肩・肘関節などの人工関節置換術)まで症状に応じた治療を行っています。